2015年12月4日金曜日

安倍晋三議員虚偽メルマガ訴訟において、事実に基づいて提訴した菅直人総理大臣(当時)敗訴の不可思議

1)東京地裁での判決

 2015年12月3日の東京地方裁判所における判決において、下記のような報道が各新聞社から出された。

安倍首相メルマガ訴訟、菅元首相の請求棄却 東京地裁
http://www.asahi.com/articles/ASHD345PGHD3UTIL012.html
民主党の菅直人元首相が、東京電力福島第一原発事故時の対応を批判した安倍晋三首相のメールマガジンの記述で名誉を傷つけられたとして、安倍首相に約1100万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決が3日、東京地裁であった。永谷典雄裁判長は、「記事は重要な部分で真実だった」と認め、菅氏の請求を棄却した。
このメルマガに関しては、菅元首相のブログに当時の(というか、つい最近まで削除されなかった)スクリーンショットが載せられている。

福島原発めぐる安倍首相メルマガ訴訟 「海水注入中断させかねぬ振る舞いあった」「記事は重要な部分で真実だった」
http://www.sankei.com/affairs/news/151203/afr1512030029-n1.html
 永谷裁判長は判決で「記事は海水注入が継続されていたことが判明する以前に発信されていた」「注入を中断させかねない振る舞いが菅氏にあったこと、(実際には東電が決めた)海水注入を菅氏が決めたという虚偽の事実を海江田万里経済産業相(当時)ら側近が流したことなど記事は重要な部分で真実だった」とし、「記事は違法な人身攻撃ではなく、論評として適切だった」と認定した。
この判決では、次のメルマガにあるような「事実は次の通りです」として紹介した記事を、「菅総理の注入を中断させかねない振る舞い」や「虚偽の事実を海江田万里経済産業相(当時)ら側近が流したこと」を重要な部分で真実として、「論評として適切」と判断しているのです。


安倍晋三議員の虚偽メルマガ
http://ameblo.jp/n-kan-blog/entry-12101576528.html
2015年5月20日

複数の関係者によると、事実は次の通りです

12日19時04分に海水注入を開始。
同時に官邸に報告したところ、菅総理は「俺は聞いていない」と激怒 。
官邸から東電への電話で、19時20分海水注入を中断。
実務者、識者の説得で19時20分、注入再開。

実際は、東電はマニュアル通り淡水が切れたと後、海水を注入すると考えており、実行した。
しかし、この海水注入を止めたのはなんと菅総理その人だったのです。
この内容とそっくりそのままの記事が、翌日、5月21日の読売新聞に掲載されます。

この日を皮切りに、5月21日、5月24日とさらなる批判の発行されます。

このメルマガを皮切りに、菅直人総理への個人攻撃が激しくなり、自民党からの菅総理への攻撃が激しくなります。

2011年5月27日、この内容は誤りだったことが、すぐに明らかになっています。

2)この虚偽メルマガ事件の背景

この安倍晋三氏の虚偽メルマガ発行された当時は、日本はどのような状況にあったかを思い出してみましょう。

2011年3月11日、東日本一帯を強烈な地震と、それに続く巨大な津波が発生して未曾有の大被害を与えました。「東日本大震災」です。

この震災で津波による被害とともに問題になったのは、福島第一原発の3基の原子炉のメルトダウンと4基目の燃料棒交換中だった原子炉建屋の水素爆発(と言われている)です。IAEAは、チェルノブイリ以上の事故だとの判断を下した大事故です。

当初、マスメディアでは、「原子力発電所は「五重の防壁」があるから大丈夫」だとか、「炉心冷却機能が備わっているから大事故に発展するはずが起こるわけがない」との楽観的なニュースばかりが流れていました。

それが、福島第一原発の1号炉と3号炉の爆発時のキノコ雲の映像が流されるにあたって、国民全体は、日本でこれまで起きたことのない規模での原子炉災害が起きていることに気づいたのです。

これを機に、日本中で原発停止の世論が起こります。
また、巨大地震の余波が、全国の至る所で自信を頻発させていました。多くの国民が心配したのが、長年にわたり警戒されてきた東海大地震の誘発です。
東海大地震が誘発された場合、東海地方にこれまで想定されてきた以上の地震や津波が起こることが考えられました。その場合、最も心配されるのが「浜岡原発」です。
浜岡原発は、東日本大震災時は定期点検中でした。その後の再稼動の時期を見計らっていました。
2011年5月6日夜、菅直人総理(当時)は記者会見にて中部電力へ浜岡原発の停止を『要請』しました。(驚くべきことですが、総理大臣といえども、一民間会社の中部電力へ浜岡原発の停止を『命令』することはできません)

当時の状況は、こちらのブログに詳しくまとめてあります。

5月6日「浜岡原発停止要請」菅直人首相会見について新聞記事を中心にまとめてみました
http://mb101bold.cocolog-nifty.com/blog/2011/05/56-7092.html
5月7日付け各紙社説 
 各紙、大筋で菅直人首相の停止要請を許容していますが、その先の主張は各紙ともかなり異なっています。しかしながら、方向性が異なっても、その先の説明を政府に求めるという部分は一致しているようです。
日本中が、原発の停止を好意的に受け止め、では、原発を動かさない場合の今後のエネルギー対策をどうするかという本格的な議論が始まりだしました。

状況として、具体的な「脱原発後のエネルギー政策」が語られ始め、それまでの日本の「原発推進のエネルギー政策」から180度の転換が行われようとしていました。

そのような状況への、それまでの「原発推進勢力」であった自民党からの「原発政策維持」としての攻撃の口火を切ったのが、「安倍晋三議員の虚偽メルマガ」なのです。

これ以後、いわゆる「原子力ムラ」勢力の巻き返しが起こり、自民党の反発により菅政権の復興対策としての予算審議が滞ります。

この時期に起きた政局は「菅おろし」としてまとめられてあります。

菅おろし
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8F%85%E3%81%8A%E3%82%8D%E3%81%97

安倍晋三メルマガと同じ内容の記事を報じた読売新聞の姿勢は、この後の鉢呂経済産業大臣の辞任につながる不可解な報道につながります。

当事者が初めて語った「放射能失言」の裏側!鉢呂経産大臣は原発村を揺るがす
「原発エネルギー政策見直し人事」の発表寸前だった
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/19475

 鉢呂が記者会見で「死の町」と発言したのは事実である。だが、大臣辞任にまで至ったのは、記者との懇談で「放射能をうつしてやる」と"発言"したという新聞、テレビの報道が批判に拍車をかけた側面が大きい。
 ところが、その発言自体の裏がとれないのだ。高橋洋一さんが9月12日付けのコラムで指摘したように、各社の報道は「放射能をうつしてやる」(東京新聞)から「放射能をつけちゃうぞ」(朝日新聞)、「放射能を分けてやるよ」(FNN)に至るまでまちまちだった。
 鉢呂本人は終始一貫「そういう発言をしたかどうか記憶にない」と言っている。実際の発言がどうだったかどころか、本当にそういう趣旨の発言をしたかどうかさえ、はっきりとした確証がないのである。

最終的には「自公と民主党内の不和」に屈した形で「2次補正予算、特例公債法案や再生エネルギー特別措置法案」と引き換えに、
2011年8月27日に菅首相は正式に退陣することになります。

 この時の、自らの首と引き換えに残した再生エネルギー特別措置法案が、その後の太陽光発電などの再生可能エネルギー発展の基礎になっています。

民主党党内の党首を決める選挙により後を継いだ野田首相は、大きく自民党寄り「原発政策維持のエネルギー政策」に舵を切ることになります。

野田佳彦
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8E%E7%94%B0%E4%BD%B3%E5%BD%A6

2012年12月16日、野田は東京電力福島第一原子力発電所の原子炉の『冷温停止状態』を宣言し
2012年6月8日 野田内閣総理大臣記者会見にて、大飯原発の再稼動を宣言します。
http://www.kantei.go.jp/jp/noda/statement/2012/0608.html
2013年12月26日、野田内閣は総辞職し衆議院解散選挙を行い惨敗します。

この選挙(第46回衆議院議員総選挙)で、民主党は歴史的な大惨敗を起こし、自民党が単独で衆議院の過半数を獲り絶対安定を取り、自公の与党が3分の2を取り衆議院再可決が可能となる現在の政局につながります。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AC%AC46%E5%9B%9E%E8%A1%86%E8%AD%B0%E9%99%A2%E8%AD%B0%E5%93%A1%E7%B7%8F%E9%81%B8%E6%8C%99

結果的に、これにより「特定秘密保護法」の強行採決や、安保法案の強行採決などといった「安倍政権による独走」を許すことになります。

まさに、東日本大震災後の日本の政局を一変させるきっかけになった事件なのです。

3)東京地方裁判所の判決の不可思議

 この判決を下した「永谷典雄裁判長」とはどういう人か、執念の調査を行った人がいました。

永谷典雄,調べれば調べるほど怪しいなあ。2013年4月1日付で法務省の官房審議官(法務省内TOP10に入るエース級)になっている。何故そいつが東京地裁の裁判長になって私の判決を代読したか。私の考えるストーリーは以下。
http://onicchan.cocolog-nifty.com/blog/2015/02/201341top10-7ce.html
裁判官検索
http://www.e-hoki.com/judge/2105.html?hb=1
によれば,H.15.4.1~H.26.3.31まで”検事”とあり,その後東京高裁判事になっているから,私も単なるヒラの検事かと思っていました。
てかヒラの検事ってなにするのか知りませんが。
ところがもう少し調べると,ヒラどころではないことがわかりました。
異動ニュース
http://relocation-personnel.com/?s=%E6%B0%B8%E8%B0%B7%E5%85%B8%E9%9B%84
【人事】法務省(2011年4月1日)
訟務企画課長、永谷典雄
【人事】法務省(2013年4月1日)
官房審議官、永谷典雄
これらがどれくらい偉い役職かを確認すると,課長職になると幹部一覧に名前が載り,官房審議官ともなれば法務省内TOP10に入るエース級ということになります。
法務省 法務省幹部一覧
http://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/kanbu.html
永谷典雄の職歴を見ても,公務員になったのは裁判所ですが,その後裁判所と法務省との間で行き来し,在任期間もそれぞれ13年程度と半分ずつです。
このブログ主の起こした裁判自体には、言及するほどのものはありませんが、彼の調べた永谷典雄裁判長の経歴には見るべきものがあります。

永谷裁判長の裁判所と検察庁を交互に経験する制度は「判検交流(はんけんこうりゅう)」といい日本独自の制度です
判検交流
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%88%A4%E6%A4%9C%E4%BA%A4%E6%B5%81

一人の人間が裁判での三つの立場のうち、「弁護士」を除く「検事」と「裁判官」の役割を経験するのですから、特に刑事事件では検事寄りの判決を下す恐れを招きかねないものです。

検事・判事の人事交流が2012年度より廃止(朝日新聞記事よりのブログ)
http://blogs.yahoo.co.jp/koganemusida/66548037.html

検事・判事の人事交流廃止 刑事裁判の公正に配慮
(朝日新聞デジタル社会裁判記事2012年4月26日5時49分)

 検察官が刑事事件の裁判官になったり、刑事裁判官が検察官になったりする人事交流が今年度から廃止されたことがわかった。裁判官と検察官の距離の近さが 「裁判の公正さをゆがめかねない」との批判を受け、法務省が「誤解を生むような制度は続けるべきではない」と判断した。
 裁判官(判事・判事補)と検察官(検事)が互いの職務を経験する仕組みは「判検交流」と呼ばれ、裁判所と法務省が合意して続けている。このうち刑事分野 の交流は、刑事事件を担当する裁判官と、捜査・公判を担当する検察官が入れ替わる形が中心で、主に東京地裁と東京地検の間で行われてきた。

 例えば、冤罪裁判となった小沢一郎代議士の事件でも問題とされています。

“判検交流”と三権分立・司法の独立
https://www.bengo4.com/c_1009/c_1208/b_168238/
小沢元秘書3人に有罪判決を下した登石裁判長 は、判検交流で93年から3年間、刑事局の検事として勤務した経験がある。人事交流といっても、裁判官は民事局に出向するのが普通だから、異例だ。あまた の裁判官の中でも、とりわけ検察と近い人物が今回の裁判を担当したのである。被告側に不利な証拠を退け、検察に対して厳しい姿勢で臨むように見せかけるこ とで、「公正な判断」であるかのように演出したのではないか。そう疑いたくなるほど、3人の元秘書への判決は不当だったということだ。
 今回の「永谷典雄裁判長」の判決では、新聞記事によると

「事実は次の通りです」として紹介したメルマガの記事に対して、
「菅総理の注入を中断させかねない振る舞い」や「虚偽の事実を海江田万里経済産業相(当時)ら側近が流したこと」を重要な部分で真実
として、
「論評として適切」と判断
しているのです。
これは、ある意味、(判決時の政権擁護のための理論づけとして)非常に画期的な判決と言えるでしょう。
「本人の振る舞いより想起される事象」や「他者の発言」により、「本人の行動を断定する」ことは、法律的に何の問題もない。
と言う事になるのです。

4)この判決が、今後の政局に及ぼすもの。

この判決について、当然ながら、菅直人元総理は上告すると発表しました。

 安倍首相の福島原発メルマガ裁判、菅直人元首相が控訴へ!会見で怒り!「とても納得することはできない」
http://saigaijyouhou.com/blog-entry-8999.html


この判決についても、こういうように考えることができます。
安倍晋三デマメールマガジン訴訟、菅元総理が敗訴 裁判長永谷典雄氏 文春、NHK、浦安液状化訴訟で異常判決連発http://danshi.gundari.info/boomerang-judgment-hiting-shinzo.html
なかなか驚きの判決で、今回の判決をわかりやすく要約したら「デマだったとしても誤解されたんだからしょうがないでしょ」というもので、公人相手だったら何でもありだろという結構白目になるような判決だ。
つまり、最終的に最高裁においてこの判決が認められれば「政権にいる公人に対しては、人格攻撃や不確かな第三者情報を持って攻撃しても問題にならない」事になる。

 現在の安倍総理が週刊誌に対して起こしている訴訟全てが、安倍総理側の敗訴になることが確定するブーメランになる。

それは最終的に予断を許さないし、安倍政権にとっては比較すると些細な問題と言わざるをえない事がある。
来年の参議院選や、もしかすると同日選挙になる衆議院選に対して、安倍政権は「喉に刺さった魚の骨」を取り除いたことになるのだ。

これが、政権が司法界に置いた「草の者」を使ってでも自分に有利な判決を出させた理由だと言っても良いように思える。

この結果、国民も野党もよほど覚悟を決めないと、「衆議院と参議院で3分の2の憲法改正の要件」を自公政権に許す可能性がある。

安倍政権の目指す改正憲法は、自民党憲法改正草案としてWebでみることができる。
憲法改正草案https://www.jimin.jp/activity/colum/116667.html

この改正草案の危険性については、今更上げるべくもないほど多くの人が指摘している。

自民党憲法草案には何が書かれているのか? (木村草太×荻上チキ)
http://synodos.jp/politics/15542

自民党憲法草案の条文解説
http://satlaws.web.fc2.com/

また、この改憲草案に公明党が賛成する理由の一つに、「憲法第20条による宗教団体の政治参加への枷」が無くなることが挙げられる。

今回の判決が、日本の戦後の終わる道程の一つあったと振り返ることのないように、しないようにしないといけない。