2015年7月4日土曜日

安保法制に対する維新の党の対案の意味

維新の党が、自民党の『安保法制(通称:戦争法案)』への対案を出してきた。




開会日 : 2015年7月3日 (金)
会議名 : 平和安全特別委員会 (7時間40分)
 説明・質疑者:丸山穂高(維新の党)
http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=45098&media_type=fp

これは、平和安全特別委員会の審議で維新の党の丸山穂高議員が対案としてみせたフリップである。
維新案フリップ1
維新案フリップ2
維新案フリップ3

もちろん、これを見せただけで、法案が提出され事にはならないので、法案提出の手続きが週明けに取られることになるだろう。

 議会制民主主義の野党としての立場として、「政府案」に賛成できなければ、「修正案」なり「対案」を出して、互いに対等の立場で議論をし、国民のために有益な法律を作っていくのが理想ではある。
だが、今回の維新の党の対案には、諸手を上げて賛成出来ないところがある。
つぎのTweetは、三宅雪子(元衆議院議員)のものである。
現在行われている国会審議は、本来6月末で終わるはずだった国会会期を、自公のみの与党協議で"95日間"もの長期間の延長を決めたことで開催され続けているものである。

なぜ95日もの長期間なのかには、与党の思惑がある。
日本の国会は二院制で、衆議院と参議院があるが、この2つは平等ではない。
議員の任期とか、選挙制度の違いとか、解散の有る無しとか沢山の相違点があるが、今考えて置かなければいけないのは、『みなしルール』による衆議院の優位である。

衆議院の優越
  • 法律案の議決
衆議院可決後に参議院で否決され返付された(又は修正議決され回付された法律案への同意を否決した場合の)衆議院議決案を衆議院で出席議員の3分 の2以上の多数で再可決すれば法律となる。衆議院可決案の受領後60日以内(※)に参議院が議決しない場合、衆議院は参議院が法案を否決したとみなすこと ができる(憲法第59条)。
ここで、見なおしてもらいたいのが三宅雪子元衆議院議員の言葉である。
現在、国会の平和安全特別委員会では(NHKはめったに中継していないが)連日、政府案への野党の追求が行われており、政府の説明に反して「一般の人だけでなく、法律の専門家から見ても明らかに憲法違反」の声が多数上がっている。このままでは、与野党の参加で国会の場で可決かどうかを議決できない状態になっている。

衆議院で考えなければならないのは、自公の与党が、合わせて3分の2の多数の議席を占めていることである。

この数はマジックナンバーで、衆議院で野党が欠席の中でも与党だけの出席で過半数の賛成で可決して(強行採決)参議院に送っておけば、参議院で議決に至らなくても、60日間がすぎれば、「みなし否決」として参議院で否決されたことになり、衆議院で審議することになる。
ここで、審議もせずにさっさと議決に持ち込めば、3分の2を握っている与党案の『安保法制』(戦争法案)は、成立してしまうことになる。

維新の党が対案を出したことで、これからの状況は流動的になり、いくつかのストーリーが考えられる。

1)維新案があるにも関わらず審議もそこそこに、自民党がこれ迄の予定通り現在の法案を強行採決し、参議院でのみなし否決を経て、衆議院での3分の2の可決で成立させること。

  • 与党のメリット:法案を可決させることができる
  • 与党のデメリット:強行採決に対する国民の反発で、自民党の支持率が下がり次の選挙で負けてこの法案を無効にされてしまう可能性がある。
  • 維新の党のメリット:対案を出したことで存在感を高める


2)維新案も衆議院で審議することにより、参議院のみなし否決が行える期間を過ぎて、参議院で会期末を迎え廃案になる

  • 与党のメリット:無し
  • 与党のデメリット:安倍政権の自民党内の求心力が弱まる
  • 維新の党のメリット:対案を出したことで存在感を高める

3)維新案も衆議院で審議することにより、参議院のみなし否決が行える期間を過ぎて、参議院に送られるが、ここで維新が賛成に回り成立する。

  • 与党のメリット:法案を可決させることができる
  • 与党のデメリット:維新の党に借りを作る
  • 維新の党のメリット:与党に貸しを作ることで、存在感の希薄化を防ぎうまくすれば与党内に入り込める

4)与党が、与党案を捨て維新案に乗り換えて衆議院、参議院を通過させる。

  • 与党のメリット:行き詰まりを見せている現在の「安保法制」(戦争法案)から、「憲法学者や歴代内閣法成長長官が合憲」と言った維新案に乗り換えることで、これ以上の支持率の低下を防ぎ、維新の党を与党に取り込むことで、改憲の発議に必要な両院での3分の2を得る
  • 与党のデメリット:現在の法案を捨てることによる安倍内閣の求心力の低下
  • 維新の党のメリット:自党の案を通過させることによる存在感の強化。与党に食い込むことができ、維新の党の党是である「憲法改正」に近づける。また、橋下徹氏が政権引退を撤回し与党内の何らかの大臣(民間人でもなれる)ポストに就くか、維新の党の背後で政局を操ることができる。

5)その他、これ以外の予想できない展開


維新の党は、『市長の任期をすぎれば政界を引退する』と宣言した橋下徹大阪市長が最高顧問であり、数日前に安倍総理と東京都内で会談を行った。内容は、明らかにされていない。

維新案は「憲法学者と歴代内閣法制局長官が合憲」と言ったそうだが、内容を精査しなければ、本当に日本の平和に資するものかどうかは判断できない。
200ページもの条文を、言葉遣いが少し変わるだけで正反対の意味になる性格のものを、簡単に判断できるものではない。

この週末から、多くの議論が短時間のうちになされるだろうが、目先のことだけ考えずに、将来の憲法改正(憲法改悪)の危機も考えなければいけない。