2012年6月21日木曜日

どさくさに紛れて行われた原子力基本法の改正の本当の危険(前編)

6月19日(火)の夜、Twitterで金子勝氏(@masaru_kaneko)のTweetを見かけて確認してみました。
https://twitter.com/masaru_kaneko/status/215230968531910658

問題の法案がこちらです。
[原子力規制委員会設置法案] (衆議院)


この法案は、新たに設けられる原子力規制委員会の設置のための法案です。
原子力規制委員会は、原子力安全委員会を廃して環境省の外局として設置されます。
この設置のために、原子力基本法の該当部分を改正する必要があります。

この法案の目的である「原子力規制委員会」自体は、数ヶ月前から与野党で断続的に協議されていました。「原子力規制庁」になるか「原子力規制委員会」になるか、多くの国民にとっては民主党と自民党・公明党の綱引きの材料にしか映らなかったでしょう。

しかし、綱引きが収まったと見るや6月15日(金)に、急転直下「原子力規制委員会設置法案」は、民主・自民・公明の3党から環境委員会に提出され、議院運営委員会にて衆議院本会議への上程が決まり、その午後には衆議院にて承認されました。

週が明けて6月20日(火)には、参議院の環境委員会の3時間の審議にて可決し、そのまま参議院に送られ採決、可決してしまい、ここに原子力基本法が殆どの国民に知られないまま、衆参2日間で改正されてしまったのです。
資料1)参照

原子力基本法についておさらいしてみます。

原子力基本法が作られたのは、昭和30年12月19日です。
これによって、原子力爆弾を投下された日本は、「原子力の平和利用」の名の下に原子力発電の研究・開発・普及への道を突き進んでいく事になります。

原子力基本法での精神としての「民主・自主・公開」の3原則は、日本国の法規としてはどこにも定められていません。この3原則は、昭和29年の日本学術会議第39委員会委員会の決議の精神が取り入れられています。

1)原子力の研究,開発および利用の情報は完全に公開され,国民に周知されること。(公開)
2)原子力研究は民主的な運営によつてなされ,能力あるすべての研究者の十分な協力を求めること。(民主)
3)原子力の研究と利用は,自主性ある運営のもとに行われるべきこと。(自主)
この原子力基本法は、日本国が原子力を用いていく上でのもっとも基本的な法律で、「原子力に関する憲法」とも言えます。

上記3原則は、原子力基本法第2条(基本方針)に、表現されています。

この原子力基本法第2条は昭和53年に改正されています。
これは1974年9月1日に発生した原子力船「むつ」の放射線漏れを機に1978年に設置された原子力安全委員会のためです。


原子力基本法等の一部を改正する法律
昭和53・7・5・法律 86号  
改正昭和52・11・25・法律 80号--(施行=昭53年7月5日)

昭和53年版 原子力白書

第1章 原子力委員会の歩みと新休制の発足
3 原子力基本法等の改正と新体制の発足



これは「原子力基本法等の一部改正法案」として行われ、1年以上の審議が行われています。
この時「安全の確保を旨として」としての文言が追加され現在に至っていました。


これに比べると、今回は「原子力規制委員会設置法案」の付則の一部として取り扱われています。
これは、法律の重要性と比べると、明らかに間違っていますし、原子力基本法の改正を隠すためとしか言えません。


「原子力の憲法」こっそり変更
東京新聞 2012年6月21日 朝刊

二十日に成立した原子力規制委員会設置法の付則で、「原子力の憲法」ともいわれる原子力基本法の基本方針が変更された。基本方針の変更は三十四年ぶり。法案は衆院を通過するまで国会のホームページに掲載されておらず、国民の目に触れない形で、ほとんど議論もなく重大な変更が行われていた。
追加された「安全保障に資する」の部分は閣議決定された政府の法案にはなかったが、修正協議で自民党が入れるように主張。民主党が受け入れた。各党関係者によると、異論はなかったという。
この原子力基本法の基本方針の変更の目的とそのもたらす影響は、後編に述べます。
これには、【原子力規制庁の人事に危険な人物】の記事が大きく関わっています。
http://mousou-meisou.blogspot.jp/2012/05/blog-post_30.html

追記)
会期末のドタバタの中で成立したこの法案ですが、その衝撃が消えないまま、本日、衆議院の会期が79日延長する事が議決されました。
この、あまりに非常識なスケジュールの強硬は、国民の議論を行わせる隙を与えないためとしか考えられません。
延長された国会の中で、この原子力基本法第2条に加えられた変更を、修正する事は出来ないでしょうか?

衆議院 会期79日間延長議決
 NHK News Web 6月21日 13時37分
午後開かれた衆議院本会議で採決が行われた結果、民主党、みんなの党、国民新党、新党大地・真民主の賛成多数で、会期を9月8日まで79日間延長することが決まりました。
--------------------------------------------------------------------------------
資料1)原子力規制委員会設置法案の起草から衆議院議決の経緯

委員会ニュース 第180回国会6月15日環境委員会ニュース

2 原子力規制委員会設置法案起草の件
・近藤昭一君外5名(民主、自民、公明)から、起草案を成案とし委員会提出の法律案として決定すべしとの動議が提出され、提出者近藤昭一君(民主)から趣旨説明を聴取しました。
・細野国務大臣(原発事故の収束及び再発防止担当)並びに提出者近藤昭一君(民主)、大谷信盛君(民主)、横山北斗君(民主)、田中和徳君(自民)、吉野正芳君(自民)及び江田康幸君(公明)に対し発言がありました。
・委員外議員(高木美智代君(公明)、吉井英勝君(共産)、服部良一君(社民)、柿澤未途君(みんな)、松木けんこう君(大地))の発言について協議決定しました。
・採決を行った結果、賛成多数をもって起草案を成案とし、これを委員会提出の法律案とすることに決しました。
(賛成-民主、自民、公明、きづな 反対-佐藤ゆうこ君(無))

会議録 第180回国会 議院運営委員会 第25号(平成24年6月15日(金曜日))
平成二十四年六月十五日(金曜日)
    午後零時十六分開議
 出席委員
   委員長 小平 忠正君
   理事 松野 頼久君 理事 山井 和則君
   理事 笠  浩史君 理事 糸川 正晃君
   理事 鷲尾英一郎君 理事 橋本 清仁君
   理事 佐藤  勉君 理事 高木  毅君
   理事 遠藤 乙彦君
      相原 史乃君    太田 和美君
      坂口 岳洋君    浜本  宏君
      三宅 雪子君    水野 智彦君
      森山 浩行君    伊東 良孝君
      小泉進次郎君    齋藤  健君
      塩崎 恭久君    佐々木憲昭君
      渡辺浩一郎君    服部 良一君
      中島 正純君
    …………………………………
   議長           横路 孝弘君
   副議長          衛藤征士郎君
   事務総長         鬼塚  誠君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月十五日
 辞任         補欠選任
  川内 博史君     三宅 雪子君
同日
 辞任         補欠選任
  三宅 雪子君     川内 博史君
    ―――――――――――――


【以下抜粋】
 次に、本日環境委員会から提出された原子力規制委員会設置法案、同委員会の審査を終了した地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、産業保安監督部及び那覇産業保安監督事務所並びに産業保安監督部の支部並びに産業保安監督署の設置に関し承認を求めるの件(承認第五号)の両案件について、委員長から緊急上程の申し出があります。

 この際、発言を求められておりますので、これを許します。佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 原子力規制委員会設置法案に対して、意見表明をいたします。

 この法案は、民主、自民、公明の三党によって緊急上程されようとしておりますが、断固反対です。

 法案は、昨夜十九時の時点で、でき上がっていなかったのであります。示されたのは、A4の紙一枚の、未定稿の要綱のみであります。きょうになって法案が示され、それを、まともな審議もせず、どうして採択できるでしょうか。しかも、本会議での討論も行わないなど、到底認められません。

 もともと、法案は、環境省の所管を超える広範な領域を含む原子力行政全般にかかわるものであり、全ての政党が参加し、充実した審議を行うにふさわしい委員会に付託すべきでありました。本会議では、重要広範議案として扱われ、総理も出席して質疑が行われたのであります。

 ところが、三党は、特定の範囲しか扱わない環境委員会に原子力規制委員会設置法案を付託するという暴挙を行ったのであります。

 私たちが抗議すると、与党は、議運理事会で、環境委員会に付託するかわり、審議には日本共産党、社民党、みんなの党などを常時出席させて審議を行わせ、理事会にも出席させるという言明がありました。

 しかし、審議時間は極めて短く、きょうを入れてわずか二回しか行われず、連合審査は一回だけでありました。理事会では、陪席さえ許されず、単なる傍聴扱いでありました。委員会での総理出席の審議も行われておりません。なぜ、これほど拙速な形で法案を通さなければならないのでしょうか。

 この法案には重大な問題が含まれております。

 第一は、昨年の三月十一日福島第一原発の事故原因と教訓を全面的に踏まえた法案となっていないのであります。

 特に、原子炉等規制法で、根拠も実証試験もなく、老朽原発の四十年、例外六十年制限としていたところ、本法案で、さらに、事実上、青天井とし、半永久的稼働を容認したことは、政府案を一層改悪するものであります。

 第二は、原子力規制組織について、推進と規制の分離、独立性を確保すべき規制委員会を環境省のもとに置くこととしていることであります。

 環境省は、歴史的にも、基本政策の上でも、原発推進の一翼を担ってきた官庁であり、今国会に提案している地球温暖化対策基本法案で、温室効果ガスの排出抑制のため、原発推進を条文上も明記したままであります。この削除と抜本的反省なしに、真の独立性は担保されません。

 第三に、原子力基本法を改め、原子力利用の目的について、「我が国の安全保障に資する」としたことは、いわゆる原子力平和利用三原則にも抵触するものであります。

 最後に、我が国の原発政策の根幹をなす日米原子力協定と電源三法のもとで、安全神話をつくり上げ、地域住民の反対を押し切って原発を推進してきた歴代政権の政財官学の構造そのものにメスを入れることが必要であります。原発再稼働など論外であります。

 このことを指摘し、意見表明といたします。

小平委員長 それでは、両案件は、本日の本会議において緊急上程するに賛成の諸君の挙手を求めます。

    〔賛成者挙手〕

小平委員長 挙手多数。よって、そのように決定いたしました。

    ―――――――――――――
【抜粋ここまで】



衆議院公報 第180回国会 衆議院公報第101号 議事経過

第180回国会 第101号
平成24年6月15日金曜日
議事経過
原子力規制委員会設置法案(環境委員長提出)
 地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、産業保安監督部及び
 那覇産業保安監督事務所並びに産業保安監督部の支部並びに産業保安
 監督署の設置に関し承認を求めるの件(承認第五号)
  右第一案は委員会の審査を省略し第二の案件とともに議事日程に追
  加して両件を一括議題とするに決し、これを議題とし、環境委員長
  生方幸夫君の趣旨弁明及び審査報告の後、まず第一案を可決し、次
  に第二の案件を委員長報告のとおり承認するに決した。


6/20参院環境委員会で原子力規制委員会設置法案可決まで (Togetter)

6月20日参議院環境委員会録画 3時間38分