2012年4月15日日曜日

情報と公開と隠蔽。自由化による東電の電気料金。

先日より、東京電力の電気料金の値上げに関して一つの噂が持ち上がりました。

東電と個別契約の大企業 電気料金は家庭の30~40%の指摘
2012年4月4日 07時00分 週刊ポスト2012年4月13日号
解せないのは、電気料金値上げで最も大きな打撃を受けるはずの大企業が、東電の値上げについて批判せずダンマリを決めこんでいることだ。経団連のトップである米倉弘昌・会長に至っては、「今の段階では(値上げは)やむをえない」と容認の姿勢まで見せてしまっている。
「東電の電気料金体系は極めて不透明で、大企業ほど安くなっている。一部の大手はキロワット時あたり8円以下とも聞いている。だからこそ、経団連などに所属する大企業からは電気料金値上げに関する文句が一切出てこない」
衆議院議員の河野太郎氏がいう。
私が調査しているところで、一番安い額で某製造業の7円(1キロワット時あたり)こうした契約料金が表に出てこないのは、料金を開示しない条件を契約書に盛り込んでいるからです。今回の値上げに関して東電が各契約事業者に送った『値上げのお願い』にも、『第三者に開示するな』と一番下に書いてあった。開示すれば契約違反になるという。これでは値上げが妥当かどうかも判断できない」
さて、この情報は本当なのでしょうか?
東京電力は、次のページで反論しています。

週刊ポスト4月13日号(44~47頁)「東京電力は大企業だけ『裏値引き』している」について
平成24年4月2日 東京電力株式会社
http://www.tepco.co.jp/cc/kanren/1201617_2005.html

●自由化部門のお客さまについては、お客さまの電気の利用形態などに合わせて、予めご用意している料金メニューを個別にご提案させていただいております。東京電力と関係が深いという理由で電気料金に特別な便宜を図るという事実はありません。
●電気は、発電所から送電線や変電所などを経由して、大工場・ビル(特別高圧需要・高圧需要)や一般家庭(低圧需要)のお客さまにお届けいたしますが、一般家庭のお客さまの方が電気をお届けするまでの設備が多く、その分コストがかかる等の理由で、料金は割高となっております。
●一般のご家庭など規制部門のお客さまの料金メニューは、電気事業法および経済産業省令に基づいて、電気をお届けするために必要なコストをもとに算定し、経済産業大臣の認可・届出を受けて決定しているものです。また、ご使用量が多いほど割高となる「三段階料金制度」は省エネルギー等の観点から、国の審議会で議論された上で導入された制度です。

開示されている情報を使って、出来るだけ検証してみます。
これからの計算には、いくつかの部分で仮定が入っており、その仮定は記載します。

まず、次の資料を使います。
資料1)東京電力財務・事業ヒストリカルデータ
http://www.tepco.co.jp/ir/data/historical-j.html

これはExcelデータで、1995年から2010年までの以下のデータがまとめてあります。
貸借対照表(連結)
損益計算書(連結)
キャッシュ・フロー計算書(連結)
貸借対照表(単独)
損益計算書(単独)
収支比較表(単独)
販売電力量
有利子負債残高・デット・エクイティ・レシオ(単独)

これらは数字の羅列ですが、調べると色々な事が分かります。
ここで使うのは、販売電力量の表です。





特定規模需要(自由化部門)のお客さまの対象範囲は、以下の通り。
00年度~:特別高圧(契約電力2,000kW以上)
04年度~:高圧(同500kW以上)
05年度~:高圧(同50kW以上)
これをグラフ化すると、次のようになります。



この特定規模需要(自由化部門)は、東京電力と各事業者との個別契約となっており、"電気料金体系は極めて不透明"となっています。
しかし、各部門ごとの電力量の平均値は求めることができます。
2000年度から特別高圧(契約電力2,000kW以上)、2004年度から高圧(同500kW以上)、2005年度から高圧(同50kW以上)が自由化された事に目を付け、特定規模需要の割合の変化から、各部門の割合を導きます。
※仮定1:年度ごとに各部門の構成比は大きくは変わらない。
次に「収支比較表(単独)」から電灯料と電力料を持って来て計算すると、電力と電灯の平均単価が計算出来ます。
2010年度で、電灯単価(一般家庭)が20.97円/kWh、電力単価が13.84円/kWh。
これが、私達が必要な値でしょうか?
本当は、各部門毎の電力単価を求めたいのです

ここで、もう一つの資料があります。
資料2)東京電力 自由化部門のお客さまに対する電気料金のモデルケース
http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu12_j/images/120117c.pdf

ここに2010年度の自由化部門のモデルケースが示されています。
<特別高圧> 百貨店、大規模事務所ビルなどのお客さま
・契約種別  :特別高圧季節別時間帯別電力A
・契約電力  :4,000kW
・単価    :14.27 円/kWh
<高 圧> 中小規模のスーパー、事務所などのお客さま
・契約種別  :業務用電力
・契約電力  :150kW
・単価    :19.51 円/kWh  
この資料から、自由化部門の電力単価は14円〜20円程度のように見えます。
一部の大手はキロワット時あたり8円以下”との噂は、間違いだったのでしょうか?
ここで、東京電力から提示されたデータが上で求めた電力単価13.84円/kWhより高いのが気になります。
実は、電力の自由化は次の図のようになっているのです。
東京電力が示したモデルケースは、【特別高圧業務用】と【高圧業務用】のケースだけだったのです。最も問題となっている【特高産業用】のケースではありません。

もっと資料が必要です。
3)2000.9.10「電力だって自由化!だいじょうぶ?原子力発電」
講演会資料(若狭連帯行動ネットワーク)
電力自由化と原子力発電
http://www4.ocn.ne.jp/~wakasant/electric/free1.htm
このページに、電力自由化前の電力量の比率と単価等の資料があります。
10電力会社の電力自由化(1996年度:総販売電力量は7746億kWh、14兆5499億円)
これは、10電力会社の合計ですが、次の仮定をします。
※仮定2
 高圧Aと高圧Bと高圧業務用の比率は、東京電力管内と大きな変化は無い。
 特高産業用と特高業務用の比率は、東京電力管内と大きな変化は無い。
 中規模工場・小規模工場・コンビニの電気料金は電灯料金の1996年と2010年の比率で変化する。
この仮定を元に、次の手順を行います。
・東京電力の特高産業用以外の各部門の電力量の詳しい比率と単価を求める。
・次に、その部門の電力収入を求める。
・2010年の電力収入の総計より、特高産業用部門の電力収入が求められる。
・特高産業用の電力量と電力収入より【特高産業用の単価】が求められる。
結果はこの表になります。
結果的に、【特高産業用の単価】の平均は8.79円となります。
東電と個別契約の大企業 電気料金は家庭の30~40%の指摘”は正しかった事になります。
これならば、一部の大手はキロワット時あたり8円以下とも聞いている。”との噂も現実味が出て来ます。

では、2010年度の計算結果を、自由化前の1996年度と比較してみます。
自由化前から安かった部門は、更に安くなっています。
わかり易いように比率のグラフを描いてみます。
特高産業用と特高業務用が、他の部門に比べて70%前後と大きく下がっているのがわかります。

2000年度から始まった電力自由化で、大企業ほど恩恵を得ているのがわかります。
この恩恵は、契約条件の不透明化のもとでこっそりと行われて来ました。

これは、東電の言っている理由
”一般家庭のお客さまの方が電気をお届けするまでの設備が多く、その分コストがかかる等の理由で、料金は割高となっております。”
で説明がつくのか、東京電力からの回答が必要です!